ゼロトラストセキュリティは、ネットワーク上の場所だけで信頼性を判断せず、すべてのリクエストをオープンなネットワークから送信されたものとみなして検証するという、シンプルな考え方に基づいています。これまでのデータベースセキュリティでは、ファイアウォールやVPNなどの境界防御に大きく依存し、長年にわたって「企業ネットワークの内部は安全である」という前提で運用されてきました。ゼロトラストでは、「企業ネットワークの内部は安全である」という前提を完全に取り払います。オフィス内のノートPCからアクセスする場合でも、リモートで作業する外部委託先からアクセスする場合でも、すべての接続、クエリ、ユーザーセッションについて、認証、認可、暗号化を行います。本記事では、こうした考え方への転換がデータベース管理者(DBA)の実務においてどのように実践されるのか、また、SSHトンネリング、SSL/TLS接続、ロールベースアクセス管理といった日常的に利用する仕組みが、ゼロトラストのアプローチの中でどのような役割を果たすのかを解説します。
境界防御だけに頼ったセキュリティでは不十分な理由t
データベース管理者(DBA)は長年、データベースは最初の防御ではなく、他のセキュリティ対策をすり抜けた攻撃に対して、最後の防御線となることが多いと理解してきました。アプリケーションサーバーが侵害されたり、認証情報が漏洩したり、クラウド環境の設定を誤ったりすると、ネットワークレベルのセキュリティ対策をすり抜けて、攻撃者がデータベースへ直接アクセスできてしまう可能性があります。ゼロトラストでは、データベース管理者(DBA)の役割そのものを捉え直します。ネットワークへの侵入を防ぐことをネットワーク担当者だけに頼るのではなく、データベースへのアクセス自体をセキュリティ上の重要な管理ポイントとして扱います。つまり、ネットワーク経路に関係なくすべての接続を暗号化し、各アカウントには必要最小限の権限だけを付与します。また、内部からのアクセスであっても外部からのアクセスであっても、信頼できることが確認されるまでは、すべてのセッションを未検証のものとして扱います。
データベースへのアクセスにゼロトラストの原則を適用する
ゼロトラストの考え方をデータベースのアクセスに適用するうえで、基本となるのは次の3つの取り組みです。
- すべての接続を暗号化する - 通信がインターネットを経由する場合だけでなく、社内ネットワークなどの内部で行われる場合でも、通信途中で認証情報やクエリ結果を傍受されないよう、通信全体をエンドツーエンドで暗号化する必要があります。
- 最小権限を徹底する - 人が使用するアカウントであっても、サービスが使用するアカウントであっても、それぞれの役割に必要な権限だけを付与し、それ以上の権限は与えません。
- 継続的に検証する - 認証は、最初のログイン時だけ確認すればよいものではありません。強固な認証情報の管理、セッションの制御、監査証跡の記録も、最初のログインと同じくらい重要です。
これらは単なる抽象的な理念ではありません。データベース管理者(DBA)が日常的にデータベースへ接続し、管理するために使っているツールにも、そのまま適用できる考え方です。
ゼロトラストのワークフローにおけるNavicatの役割
Navicatの接続機能には、これらのゼロトラストの原則のいくつかを具体的に実践できる機能が備わっています。通信中のデータを暗号化するために、接続設定画面にはSSL/TLSの設定機能が用意されているほか、SSHトンネリングにも対応しています。SSHトンネリングでは、データベースエンジン独自のTLS設定に頼るのではなく、データベースとのセッション全体を暗号化されたSSH接続の中で保護して通信します。そのため、サーバー側でTLSが設定されていない場合や、ファイアウォールの設定上データベースのポートを外部に公開していない場合に便利です。また、SSHトンネリングでは、パスワード認証だけでなく公開鍵・秘密鍵による認証にも対応しているため、データベース管理者(DBA)にとって、固定パスワードだけに頼るよりも強固な認証方法を選択できます。
アクセス管理の面では、Navicat On-Prem Serverが、3段階のロールシステムによってプロジェクト単位での共同作業を管理します。管理者は各メンバーにアクセス権を割り当て、プロジェクト内で実行できる操作を設定できます。こうしたプロジェクト単位のアクセス管理は、MySQL、PostgreSQL、MariaDBなどのデータベースに対して、データベース管理者(DBA)がNavicatのUser and Privilege Managerで設定する、データベースエンジンレベルの詳細な権限制御を補完します。
結論
ゼロトラストは、特定の製品に備わった単一の機能ではありません。すべての接続を検証し、すべての権限を最小限に抑えるという考え方への転換です。データベース管理者(DBA)にとって、この考え方への転換は、すでに日常の業務で使っているツールを活用して実践できます。例えば、ネットワークの場所だけを理由に信頼するのではなく、暗号化されたトンネルを使用すること、また、広範囲にわたる固定的な権限を与えるのではなく、ロールに応じてアクセス権を設定することです。こうした習慣を日々のデータベース管理に取り入れていくことは、ゼロトラストの原則を設計図の上だけの考え方から、日々の実務へと落とし込んでいくための、現実的で段階的な方法です。

